今回で理系のライフデザインとしての「コンサルタント=知的自営業」を目指すHOW TOの第一部解説は終了します。第一部の最終である今回(第10回)は、それでは「各自が何から始めたらよいか」ということに絞って具体的に3つの視点と方法論(自分の会社人生での特徴の棚卸方法、実際の記入シートを用いた見つけ方、異分野融合によるさらなる自分の強み発見方法)を用いて解説していきます。
会社の中でさまざまなことを経験してきた方には、間違いなく新しい価値としての未来向きの強みが存在しますし、その意識が芽生えた時が、両利きの能力の開発スタート時期です。(今回については、すでに「第一歩は済んでいる=自分の強みはよくわかっている」方はスキップしていただいてかまいません)
・現状では何が出来るか、未来は何に向いているかの必要な意識の棚卸
人生100年のライフシフト時代ですが、まさにその中で10年以上、サラリーマンとしてきちんと仕事をやっていた人ならば、まずはその組織内での自分の強みが必ずあるはずです。大切なのは、その強みとなる能力と意識が組織の枠をはみ出して自分自身のライフデザインを自ら描いていく「意識が明確」になってくるかです。その意識に目覚めた時が実は組織からの第一期の卒業時期、すなわちライフシフトの適齢期でいう第二ステージから第三ステージへの転換期、ライフデザイン作成のスタートのタイミングとなるのです。
未来や過去を[※1] 意識したときに、自分探し=棚卸が必要になり、それが自分の人生全体への意識がほのかに芽生えて不確定な未来が見え始めたときが次のステージ(一般的には組織からの卒業のステージ、ここでは自立して知的自営業としてのコンサルタント開始のチャンスになるのでしょう。すなわち自分に何が出来るか、何に向いているかということを明らかにするスタート機会となるでしょう。実はだれでも自分自身について考えていくと、簡単そうで、簡単とはいえないのが普通です。小生自身もわからない、ないな、と言いながらとにかく「始めなければ始まらない」と唱えながら始めました。これが通常の状態ですので安心してください。
例えば、多くの人は現在の「自分の得意な分野」を聞いても明確にいえる人は(自分はこれをやってきたということはいえても)少ないのです。これは、ある意味では当たり前で、外の視点を持たない組織人間として生きてきた多くのひと(組織の歯車となって全力で生きた人)には、客観的に自分の能力を判断するすべがないことにもよります。
しかし逆にいうと、ライフデザインを描く前は、実は「自分の強み」が組織内では虐げられてきた場合も多いのです。そこでは自分内で認識されずに眠っているということにもなります。いわゆる意識の範囲外に関する部分です。また大きな組織の中で色々な部署をローテーションしてきた人は、結果的には多くの武者修行をしてきたことと同じになるので、自分の持てる力は多岐にわたっているはずです。すなわち、どちらにしても次のステージに行くときは、意識転換だけで、苦労した、あるいは難しかったこと(他人が簡単でなかったこと)は色々な方面での強みとして発揮出来るというプラス思考にもっていけばよいのです。
もちろん自分の能力の得意分野がすでに見つかっていれば(意識がかわっていれば)、自立することでその分野は組織内にいたとき以上に世の中に貢献でき、世の中の価値につながる可能性は大きいです。さらに何かを未来に追加すればダブル、トリプルに専門性や特殊性を持つことにつながり、未来の価値への選択史は大きく広がります。この具体的な手法としては昔からさまざまの方法が提案されており、そのどれでも良いのですが、なるべく多方面の切り口で星形や六角形のチャートで展開するという定性的な方法などがのぞましいです。最初の切り口の一つとして、まずは次のところで述べるようなキーワードや短文にて整理してみることをお勧めします。
・多くのサラリーマンはマルチメジャーの候補生であることは間違いありません。
ぜひ、まずは自分探しのための活動を始めましょう。素晴らしい潜在能力が自分に隠れていると認識して、その能力を開花させるための投資と実行のロードマップを描いていく意識を持つのです。そのために仮説として、えいやっと直感をフルにつかってメモ書きしていくのがポイントです。最終的には何回か見直して1-数年の集中で繰り返すのです。そう一度に出てこないのが普通です。
スタートとしての最初のアクションは現在と過去の強みの直感的な再認識という意識です。その意識を進めるため補助としての記入表の一例を下記に示しています。ポイントは一般のサラリーマンが経験していない、希少性・専門性・特徴性をどんどん記入することです。例えば、社内で色々な職種をすでに経験したぞ、という方や、ずいぶん嫌なことをさせられた、とんでもないところに配属されたなどの経験者は大いなる候補者になります。
だれも手をあげなかった難しい仕事をやった(やらされた)とか、動機は別にして苦労した経験があるぞ、などなどです。もちろん「お宅的」なこれだけは、自分の趣味や特性として負けないということも候補になります。
ある程度の(ざっとした)、専門スキルと[※2] 自分探しの結果のスキルが見つかれば、それらを掛け合わせることで、ダブルメジャー・トリプルメジャーになる可能性は広がります。表として示したフォーマットにはそのイメージに気づいたところを記入できるように、記入式として示しましたが、自分でいろいろと記入してみましょう。自分の可能性とそれを本当の専門にするためのギャップが一つでも見えてくればしめたものです。ここでいう一流性とは組織のなかでの専門家という位置付けでのポテンシャルということにします。
表 企業のサラリーマンはマルチメジャーの候補生(イメージ)記入シート
企業の中外での職種の経験を記入
◆横軸:(部署など)
・その主な専門性とコアになるスキル、
・どうすれば専門家になれるか(さらなる対応の可能性) ・(記入のポイント)
◆縦軸
・入社時(卒業時の専門)
・企業の中で取得した専門知識(1)
・企業の中で取得した専門知識(2)
・企業の中で実施した希少性(1)
・企業の中で実施した希少性
・趣味、お宅性の得意なもの(1)
・趣味、お宅性の得意なもの(2)
(記入例)事業企画部 (3年間、課長職) (記入例)ビジネスシナリオ作成(各種事業企画書の作成と判断) 顧客マーケテング(初期顧客の対応) (記入例)自分での社内ベンチャー立ち上げ、MBAを聴講により実ビジネス経験を補強
・価値を生むこととは・・・さまざまな異分野アイデアの融合により新しい価値を生む考え方と事例)
個人の強みの発見がある程度なされたとして、それらを展開してライフデザインとしての自分ロードマップに落とし込む考え方について、さらに検討してみます。ロードマップにおいては、現在の状態から未来を垣間見るというスケジュール的発想ではなくて、「未来にこうありたいという姿」を自分で描くという視点はすでに述べてきました。
「未来から見る」というのは言うは易しで、行うのは簡単ではありません。それは、自分の未来が見えていないからです。もちろんボーとしていては、いつまでも見えてきません。未来は自分で創り出すものだからです。ではそのために何をするか、自分で自分の未来の姿(ビジョン)を仮置きすることで、現在との落差(ギャップ)を明確化してそれを埋める方法論をできるだけたくさん出していくのです。これを行えるかどうかではなく、これをドーンと行うことが意識改革です。
もちろん、そう簡単には描けないことを承知でトライすることがポイントです。ここで、具体的な未来の価値を考える際に、役立つであろう、さまざまの視点というのを紹介しましょう。いわゆる自分を「ひとつの事業体」として考えたときに、いったいどこで社会に貢献して価値を得るかという発想も必要になるのです。ビジネスパターン(モデル)を知ることは自分の強みや理想と現実のギャップを埋めることを発見するヒントと同じになります。
事例を一つだしましょう。筆者の知り合いの大企業出身で今は先端的中小企業の社長は、エレクトロニクスとバイオのハイテク業界で次々と新商品を生み出すことで有名な方です。20数年間、毎年数十機種の新製品が発表され、そのほとんどが売れて商品になります。そのすべての製品には、新しいアイデアが埋め込まれているのですが、ベースは既存技術(ローテク、レガシー)を用いた顧客ニーズ側の先取りシナリオ造りです。またそのアイデアのほとんどの源は異分野でのコンサルタントや顧問活動から得られたものだそうです。それらの個別のネタは実は普通のものなのですが、組み合わさることで他との違いが生まれ新しい価値としてを発揮するのです。
異分野の智恵の融合というのは他分野の知識や知恵の応用を重視し、リスクのある新規開発を極力避けるています。よく新規やユニークのものの価値が大きく取り上げられますが、新しいものは不確定性が多いのでリスクは高く、このリスクは極小にすることが大切です。もちらん、はずれるほうが多いのですが。さらにいうと、とる必要のないリスクはリスクとして,回避する方針が彼の頭のなかに本能的にはいっています。先人たちが築いてきた、異分野の汎用、既存のもの(いわゆるローテク、レガシー)を徹底的に使いアイデアの融合で成功率を上げることが必要になるということでしょう。
では、異分野から新旧のアイデアをもらう(発掘する)には、どうしたらよいのでしょうか。自分の持っている智恵をその他の分野(広い意味での異分野)ところで、「惜しげもなく出していく」ことから始めます。ここで、自らの智恵を出し惜しむと、新しいアイデアは得られなくなるといえます。すなわち自分が持っているものを吐き出すことで、新しい分野の智恵を聞くことが出来、吸収も出来るのだそうです。
その業界の人に役立つシナリオ創出することで、真の新しいニーズとネタが聞こえて吸収できてくるというわけです。ここには業界の常識は他業界の非常識(新アイデア)ということと、異分野の業界で使われてきたものならば、それを取り入れることで、さらなる新アイデアを取り入れても、内容は安心できるものとなるのでしょう。実はそう考えていくと、「意識が相手の価値」に及んだ時に、うまく廻っていくということでしょう。
以上
(第一部の終了と第二部への展開)
本稿(第10回)で、40-60歳のサラリーマン技術者が知的自営業(=コンサルタント、独立契約事業者、個人事業主、一人会社など)の基本的な項目について述べてきました。最終的には自分の人生、自分を客観的に見ながらライフデザインを考えていくことのなかで、考えていくことですので自分ですべてデザインして実行することになります。このため、何が正解とか、最適の時期などは特になく、思い立った時がスタートということです。言い換えると自分自身ですべて決めてその結果も自分自身のものとなります。
今後連載を予定している第二部では、それぞれの皆さんが実際のスタートを行いやすくするために10人の個別の事例を紹介していきます。すなわち筆者の友人・知人をモデル(あくまで想定モデルを基にした架空人物となります)として現在の実年齢は55-80歳である方々の、第三ステージとしての知的自営業を実際に行っている人々の思い立ったきっかけ、時期、行ったこと、実際の収入実績(見通し)などです。
[※1]知的自営業:独立・起業とは意味がことなります。ここでは企業ではなく、独立、または自立という意味で自営業を用いています。似た言葉に個人事業主、独立契約請負者、フリーランス、顧問契約者、外注請負者、嘱託契約者などがありますが、ここではその中で特に知的な面(知識、知恵、意識など)をベースに顧客にコンサルティングを行うことを主に考えています。コンサルティングの意味は第一回、第二回などを参照ください。 [※2]専門スキル:一流とかプロフェッショナルとか考えずに他社よりも(一部でも)差別化できている可能性があるもの、特に経験にもとづく差別化スキルをここでは専門スキルとしましょう。
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