【日時】2020年12月12日(土)13:30-17:20 (懇親会 17:30-19:00)
【参加者】30名
【開催報告】
6月、10月のフォーラムに続いて寺子屋フォーラムもZoom開催でした。
オンラインの利点として、海外からも3名参加されました。皆さんオンラインに慣れてきたのか、
チャットでも活発な意見交換がされました。
1.阿部理事長挨拶(13:38~13:58)
「明るく夢のある未来社会の共創に挑戦しよう!」
未来塾の特徴や変遷を再確認し、メンバーに向けてのメッセージを語って頂きました。
伊藤穰一氏「自分で考えることが重要になる。 それには仲間との議論が重要」
出口治明氏「成長意欲を持って学び続けることこそ、いつの時代にあっても
人間にとって最も大切なこと」
などの引用が印象に残りました。
テクノ未来塾は弱いネットワークであり、その強さがあることを改めて感じました。
(詳しくは、入山章栄著『世界標準の経営理論』第25章「弱いつながりの強さ」理論を
御覧になってください)
そして、未来を構想すること、議論の進め方として「理想を掲げた現実主義者たれ!」と
締めくくられました。
阿部理事長の言葉に対して、下記のチャットコメントがありました。
未来塾って「フレキシブルなネットワーク」と感じてます。
いろんな知識を携えたメンバーが集う未来塾は、いろんなケース、リスクに気づく
情報の融合として貴重な場です。
2.パネルワークショップ(13:59~15:00、15:10~17:00)
◆セッション1:対面,リアルから、オンライン,バーチャルへの変化への対応
前半は、未来塾メンバーパネリスト4人によるショートプレゼン。
成田正見さんは人事部での採用の仕事から、変化を語りました。
学生はデジタルネイティブで、未来塾メンバー世代よりも慣れているそうです。
辻岡は、オンライン講義を受講したり、趣味がオンラインに移行した経験から、
リアルとの違いなどを話しました。
松嶋 隆さんは、オンライン会議のデメリットと対策を話しました。
今年の忘年会をどうすべきかという示唆も話されました。
堀池 正人さんは、会社での変化を話されました。300人規模の月例会議をどのように変えたか。
前半のプレゼンを受けて、20分間のグループディスカッションを行いました。
Zoomのブレイクアウトルーム機能を活用して、約5人ずつに分かれました。
ディカッション内容はチャットで共有されました。
各グループとも主な論点は3つです。以下のような意見が出ました。
<オンラインのメリット>
・会議室の予約不要
・テレワーク以外の出社者が会議室を取りやすくなった
・オンラインのコミュニケーションを楽しめる人もいる
・セミナー増えたのは嬉しい
・偉い人も移動時間がなくなったためか。15分くらいのオンラインミーティングを
受けてもらいやすい
<オンラインのデメリット>
・リアクションがわからない
・慣れていない人の取り込みが課題
・初見の人が多いと難しい
・発言の背景がわからない
・セキュリティ問題でビデオオフ参加
・個人情報、機密情報をどうするか
・クリエイティブな発想が出てこない
・誰が話すべきか、お見合いしてしまう
・本当にその人なのか
・レコーディング問題
・根回しが難しい
・海外との時差
<今後どうするといいか>
・デジタルネイティブが標準になるかもしれない。
・アイスブレイクの重要性
・VR活用
・ワイガヤ活用のアプリ、学生は既に使っているのでは?
・気軽にコミュニケーション取れる場が増えるのではないか
◆セッション2:「技術開発の進め方はどう変わったか、今後の進め方は?」
中澤 慶久教授(徳島大学 社会産業理工学研究部 生物資源産業学部)
■内容
(1)大阪大学の産学連携
(2)内閣府出島構想
(3)トチュウエラストマー(その後)
(4)グループ討議後の質疑応答
■詳細
(1)大阪大学の産学連携
・大阪大学が全国の大学で最も進んでいる
・2018(93講座) → 2020(101講座、19協働研)
・協働研究所のアウトプット
⇒事業化、社会実装
2020年にNEDO講座を目指しその後リカレント教育の取り組み
テクノアリーナ構想
・さらに、工学研究科の全専攻に「産学官共創コース」を設置
「インターンシップ・オン・キャンパス」
⇒産業思考型博士人材の育成
・共同研究講座の資金調達が増加傾向
ただ、阪大で、企業の活動経費の負担率が来年から
20% → 30%以上に変わるのが課題
・企業が税控除可能な出島構想が考えられている
(現時点は一部大学のみが対象)
・企業が抱える研究開発のジレンマを大学と連携することで解消できるメリット
⇒研究開発エコシステム
(2)内閣府出島構想
・詳細は別の配布資料参照
・文科省が産学連携の課題まとめ(人材・マネジメント・資金)
・利益相反、知財、経費などのモヤモヤ解消のため
現状の大学内での協働研から、出島内への協働研へ
大学傘下の法人と、企業が契約する
・出島の研究費の減税率は今後法制化予定
(3)トチュウエラストマー(その後)
・日立造船は脱・造船
重厚長大産業 → インフラ整備産業 → 環境産業 → 次世代産業
・トチュウに注目、杜仲茶(後に小林製薬へ売却)=トクホで成長
・イノベーションには明確な役割がある
①起業家(0→1) ②プロデューサー(1→10) ③経営者(10→100以上)
⇒中澤先生は自身を①の人材と思っている
・「変人と呼ばれる存在になれるか」(京大変人講座より)
⇒イノベーション=普通の人が思いつかない=変人がいないとできない
真面目な人も必要だが、全員真面目じゃダメ=変人の必要性
(決められたことを真面目にやっているだけでは絶滅する)
99人の悪い変人を許容しないと、1人の「いい変人」は生まれない!
・中澤先生のアイデンティティー
「植物を使って何かを創りたい!」
⇒強み:トチュウを使った研究、実用化
大阪大学との共同研究から、協働研究所の仕組み化
・2020年 トチュウエラストマーは、協働研を卒業して事業部へ移管
協働研は人事一新、医療装置分野への参入
・トチュウエラストマーの応用
トランス型ポリイソプレン産業
100年前にシーメンスが電線などに応用
1980年ごろにクラレが合成素材、近年は中国がタイヤに
・HITZからは、3Dプリンターフィラメント、ゴルフボール、化粧品へ実用化
化粧品:角質ピーリングジェル
(量が出ない、単価が高いという点で化粧品もターゲットに)
・中澤先生は徳島大学へ(これからは人財育成)
2016年に発足した学部
農村問題・経済経営系、漆バイオエコノミー、トチュウ
(4)グループ討議後の質疑応答
・グループ1
学生がなぜチャレンジしないか?
⇒徳島大学:地元志向、就職思考、研究室の選択肢は多くない
外に出ていくことの面白さを感じていないのかも
コロナの影響は?
⇒実験系には影響あり、1年生は実験できていない
阪大は先生が実験するところをビデオで見せている
・グループ2
どうやって変わり続けているか?そのタイミングは?
⇒それほどタイミングは考えているわけではない
無理やり変わっているところもある
杜仲茶のときは飛込営業、今も調査は飛込でやっている
・グループ3
今は人材育成に注力しているのは以前からその予定だったか
70代は何をする予定か
⇒10年ごとにテーマを考えるようにしてきた
過去の先輩を見ていて50代半ば以降は最前線にいてはダメで
後進に前に出てもらわないといけない
70代は故郷の宇和島で農業をしたいと考えている
徳島大学を選んだ理由は?
⇒大阪に近い、宇和島にも近い
徳島が自然が多く、粟・ヒエなども残っているところがよい
・グループ4
産学連携があまりうまくいっていない理由、日本と海外の違いは?本気度の違い?
⇒イニシアチブを企業側がどれだけとれるか、また先生に
インセンティブを与えられるかなどが課題と思う。
阪大はそこがうまくいっている。
企業が大学に任せたらうまくいくものではない
企業でなく、産学連携で取り組んだ理由は?
⇒企業の事業ドメインから遠いことに取り組んでいたので
遠いドメインである産学連携
・グループ5
産学連携で誰と組むかが成功のポイントと思うが、その基準はあるか?
⇒論文を見て、サイエンス要素だけでなく事業観点があるかどうか、
社会実装をする気があるかどうか
話をしてみるとおおよそわかる
明確な基準はないが、感覚的なもの
4.未来塾 全体活動報告(17:00~17:23)
広報委員会 折田伸昭さんから「PR動画企画案」の説明がありました。
なお、寺子屋フォーラム開催後のアンケートで多くのキャッチフレーズが集まったようです。
今後は、プロジェクトやサークル活動の報告会を月1回くらいやっていきたいとのこと。
産業デザイン財団賞について出川先生から説明があり、広報委員会を代表して折田伸昭さんが
受賞されました。
●懇親会「未来塾の未来を考える」(17:30~19:00)
全体会合と2回のグループディカッションを交互に行い活発な意見交換がされました。
・オンライン講義が普及したことにより、先生方は設備を揃えているはずなので、
もっと講師を呼べるのではないか。
・エンジニア以外のことを学ぶことに魅力を感じている。エンジニア集団にはこだわるべき。
・5年後、10年後、何を求めていくのか。
など。
中澤先生の講演を受けて「変人」の話題でも盛り上がっていました。
『京大変人講座』1冊目の出版直前からウォッチしているので、変人への注目は嬉しいです。
チャットにコメントしたように
「変人とは世の中を変える人」by門川市長(2019年4月、出版記念パーティにて)
という言葉もあります。良い変人を目指そうという締めくくりでした。
中東理事の的確な進行により、盛り沢山の内容をうまく構成された寺子屋フォーラムでした。
今後、状況が変化しても、これまでの経験をもとにオンラインとリアルを併用して活用して
いけると思いました。
(文責:辻岡啓司、斎藤一樹(セッション2))