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第8回.大学教授とコンサルタントの違いは何か;大学の先生は退職後、コンサルタントになれるか?

更新日:2020年4月13日

第8回.大学教授とコンサルタントの違いは何か;大学の先生は退職後、コンサルタントになれるか? 2020.1.2

大学の先生がコンサルタントになれるか、いやなりにくいのはどうしてか、という観点ですこし経験談を述べていきます。理系の大学教授も広くは技術系のサラリーマンであり、本書の範疇にはいることと、教授とコンサルタントの違いを考察することで、より明確にコンサルタント系知的自営業の業務を考えてみることは、これからコンサルを志望する方々の参考になるとおもわれるからです。

もちろん、一般論として大学教授がコンサルになれるとか、なれないとかの議論はできません。結論的に言えば完璧に出来る(成功する)人もいれば、大学教授としては完璧でもコンサルタントとしては全くうまくいかない人もいらっしゃいます。


(相手(学生と顧客)の違いからくる基本的な異なり)

まずは顧客というか「話をする相手」の質の違いです。教師は学生、生徒が自動的に確保できる(というよりも、学生、生徒がまずいて、その教育のために教師という必要な職業が存在する)が、コンサルタントの場合には最初からお客ありきではないので、まずはお客を見つけることから始まる(める)のです。また生徒学生には教師の選択権はない(非常に限られる)が、コンサルタントの顧客の場合には、大いなる選択権があるということも大きな違いとなります。

 この結果、何が違うかというと、そもそのも「ミッション」が全くちがうということになります。教師は答えとその解法を教える教育者の立場であり、コンサルは答えがない問題に対して、答えを教えるのではなく、何が課題かを一緒に考え伴走して、その人に対する最適な答えを導き出す立場です。すなわち、大学の先生は真実をいうことが商売(義務)であるが、コンサルタントは必ずしも正しいことを言う必要はないどころか、なまじ真実を語ればよいというものではないのです。この辺りを最初から理解しないと、コンサルタント業はなりたたないことになることは自明です。


(相手の何を満足させればコンサルタントは成り立つか)

もう一つ大きな違いがあります。筆者もいくつかの大学で客員教授や非常勤講師として講義を依頼されてきているのですが、そのときどのような立場で授業を行うかについては、結構考えます。典型的な違いと考え方について紹介しましょう。

まず大学の先生(教員)の立場の時は、まずは専門知識の普及者として全体最適化を考えます。学生層の平均的な生徒(学生)像をイメージして、その学生を中心にして70-80%程度の理解を深めることが授業内容、(資料と話し方)の基本構成となります。いわゆる全体を満足させることが必要なわけです。

しかし、コンサルタントとしての社会人学生や企業の技術者むけにマーケテングを兼ねたセミナーの時には、考え方が大きくかわります。この時は、一部の本当に知りたい、困っている人に焦点をあてて、説明や対応することが求められるのです。すなわち、(70-80%はある意味で犠牲にしても)10-20%の本当に価値がある人を対象に掘り出す(ビジネスにつなげる)ことが本当のマーケティングということになります。

万人によいという先生は、コンサルに向いているかどうかは何とも言えないのです。本当に困っている人に回答のヒントを示すことが価値となり、費用を払ってくれることとなるのでしょう。


(専門性とは:AIに負けない必要なところと不要なところ)

いわゆるコンサル業における専門性について考えてみましょう。その内容は、自分の得意なところが主体となりますが、技術そのもののコンサルの場合には、直接の専門性が役立ちます。しかし現在のようなビッグデータの時代には常にブラシュアップやリバイスを継続しておかないと、あっという間に陳腐化するというリスクも生じます。

何しろコンサルする相手は、まさに現役の専門家だからです。このため、いわゆる専門のコンサルという立場はなかなか、成り立たない面もあります。多くの人並外れた失敗を自分で経験していたりする場合はまだよいのですが、よその(他社など)事例を知っている場合(大学の先生などはこのような立場に近い)は差別化できにくい可能性があります。いわゆる社内でのスペシャリストでなく、世の中に通じる、その道一筋のプロフェッショナルの立場です。

違う専門性の立場が、いわゆる専門性はちゃんと持っているが、ほかの専門性に対する異なった切り口でのアドバイスといったものです。これはコンサル側に専門性だけでなく、広い見識と知識が求められます。例えば専門用語というのはなかなか一般の人には通じないものですが、それを他の専門分野の人にわかりやすく伝えることが出来るとするとすごいこと(希少性)です。また、顧客の専門性や特殊性を聞いて、自分のもつ専門や見識を融合させることで、あらたな提案やアドバイスを行うということが可能になると、まさに新しい視点を提供するという技術的なコンサルタントなるわけです。

 もう一つがいわゆる専門性も加味したマネジメント系のコンサルです。戦略コンサルとかいわれるたぐいです。視点を大きく変化、時間軸を長く、いわゆる空間的、時間的に俯瞰していき、新たな切り口でアドバイスをするコンサルになります。この場合にはいわゆる技術的な専門性はあまり意味をなさなくなります。なぜかというと、人間自身にともなう普遍性が生じるのがマネジメントでであり、逆にそのような経験や場数を踏んで他人と異なった視点を持っていることが必要になってきます。

                                                                              以上

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