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第7回.コンサルタントの営業活動とは何か?まずはお客とはだれか?

更新日:2020年4月13日

  世の中には既存製品を売る、拡販するという営業技術、マーケテング技術については多くの成書があり、またネット上でもいろいろな実践事例、ノウハウを含めてあふれているといってよいのです。ではこれらが、コンサルタントの営業活動につながるかというと、それははなはだ疑問となります。なぜかというと、売り物がブツとかカタログの製品やサービスという明確なもの(イメージ)とは程遠いからです。

 コンサル業を開業した時にはもちろん、顧客はおりません。しかし何となく(潜在的に)顧客はいるはずである、それにはお客にPRがたりないからだと考えてしまいます。そこで、一般の営業マニュアル通りに、それにはさまざまな発信を多数行う(足でかせぐ、パンフレットをばらまく、なんでも宣伝になることには顔を出す・・・)ことであるという、教科書的な方法論を片っ端からためすところから始まりました。

 もちろん全部がそのとおりに一筋縄ではいかないことはもちろんです。そのうちに何とか顧客がみつかり、コンサル業も軌道にのることになりますが、それらの初期の経験を通じて気が付いたことなどをこれから始める意思がある人には参考になるように、できるだけわかりやすく整理してみましょう。


・顧客候補とはコンサル内容に価値を感じる方たち

 コンサル業の難しさのひとつは実際に何を売るかという、「ウリモノの特定」がされていないことにあります。また市場も明確でない(逆にいうと選べる、無限にあるという面もある)という、まさに新規事業の展開と一緒だと気が付いたのは、創業後しばらくしてからです。実際に何をしていたかというと、まずは「オーソドックスに色々な発信」をこころみていたわけで、まずは本を書いて出版すること(新書の執筆、各種専門誌などへの連載執筆)や広い意味のマスコミのインタビューをうけること、セミナー屋の講師になっての講演などを2-3年かけて仕組む準備をしながら実行していきました。

 いずれも少しづつですが、顧客の発掘と獲得につながりましたがなかなか本格的な顧客獲得に通用しません。もちろん色々と考えて仕組むことは必要ですが、何分と広大なマーケットのなかでの個別のささいな発信だけでは空回りが多いという実感という限界がありました。多くの顧客は色々なことに興味を持っていても、本当にお金を出して買おうというものはごくわずかであり、またそれはそれぞれの部門の上司の説得、納得も必要なのです。自分が相手側担当者の立場で考えてみれば当たり前ですが本当に必要なときにしかお客はコンサルに頼もうとはしないものです。したがって、もし注文があるとしても時間・空間的にもピンポイントなニーズが立ち上がる時だけといえました。

 そこで気が付いたことは一番効率的な方法としては以下のようなことです。当たり前ですが客は向こうから来てもらうことがベスト、こちらから、いくらPRしても向こうのニーズとなかなか合わないということです。下手な鉄砲はあたるのではなくて、下手な鉄砲は打てど打てども当たらないのです。客に命中させるためのは、向こうから(価値を感じてくれる客候補)に来てもらうことだと気が付きました。


・まずはお客候補を効率よく、どうさがして来てもらうか

 上記の気づきをベースにして少しづつお客様候補をターゲッティングとして絞り込むこともはじめました。その具体的な手段としては次のような3つの原則に集約されていくことになります。

・コンサル顧客のターゲテング方法(1)

 自分のテーマやPRの内容に、お客から身近に来てもらうことです。一番効果的だったのは、テーマを決めた関連する項目のセミナー開催(自分で行うか、セミナー屋、講演会、学会、社会人大学講義などを活用)となります。考えてみると、あたりまえですが、まずは自分が得意としている部分(テーマ)に関心が高い人しかこないのですから、すでに十分選択された顧客がまずは母集団として存在していてくれるわけです。そこのなかで、セミナーを行い、名刺交換をすると、いわゆるFACE TO FACEで直接会う機会となるのです。いわばお客が鴨葱しょってきてくれるというわけで大変わかりやすいです。

・コンサル顧客のターゲテング方法(2)

 自分の出した書籍、ブログ、雑誌記事などにコンタクトがあったお客にちゃんと、対応することです。これもセミナーのもっと広域版といえますが、著書や記事は当然ながら自らの得意な分野が著書には記述されているのですから、それに関心をもちわざわざ問い合わせしてくれるということは、素晴らしい顧客候補になる可能性があるということになります。

・コンサル顧客のターゲテング方法(3)

 頼まれた仕事は断らないことです。要するに頼んでくる、本気で打診してくるということはまさに、注文をくれるかどうかは別として、最高の顧客候補なので逃がすことは本当にもったいないことです。要するに頼んでくるということは、その依頼ごとが解決可能という専門家に期待・見られているわけです。もちろん、まったく自分の分野と重なりがない分野は別として、何らかの重なりがあれば、切り口が新しくなる可能性がある(双方に)わけなので。とにかく積極的に実施準備をおこなって、実現に努力することです。


・市場からのアプローチ①自分が顧客の立場に戻って考える

 きちんと仕事をこなしてきた人は、マーケット側からみたら、必ず価値があります。なぜならば組織の中で最後は顧客の価値となって企業の収入となっていたからです。ただし、組織内にいる人で、外で市場・顧客価値を発揮する場合には、二つの関門があります。一つは、会社の組織というのは縦割り組織になっており、なかなかどこが価値か、直接は見えないので、それをある程度特定する必要があります。特定されてくると(まだ仮説ですが)顧客へのアプローチの方法が大切です。これはだれか営業の人ががやってくれるのではなく、自分でマーケットへの直接アプローチに切り替えなければなりません。一般にはその切り替えが見えない状態はリスクが高いということになりますが、自分で肌で感じて、うまくつながることさえ出来れば直接つながることで、分配率も高く収入も稼げるというように状況は変わってきます。

 筆者の経験としては自分が会社にいてコンサルを使う立場だった時にどのように自分(顧客)はコンサルを選んだか、コンサルの内容やプロセスのどこに価値を感じたかを振り返ってみるのが一番だと感じて、それを考えていき、そのように実行してみました。まさにマーケティングの手始めが元勤務していた組織での自分の顧客側からみた価値判断です。マーケットでのリスクをへらすことは顕在マーケットでの自分の価値を判断することになります。実はこれがちゃんとあれば、サラリーマンを卒業したあとも、元の組織と円満に離れてなおかつこれまでの組織内の既存仕事の受け皿にもなれます。場合によっては復帰(復社、復職)も可能という良い関係となる大切な方向性も可能です。


・市場からのアプローチ法②市場から集まってくれるアプローチ

 まったくの新しい潜在マーケットを狙う場合には、個人であっても企業の新規事業展開でのやり方が参考になります。マーケットサイド面で言えば、ロジャース理論やキャズム理論の活用がベースになります。萌芽マーケットステージでのニッチ狙いか、初期マーケットステージでのニッチではあるが、少しは市場が見えている段階のほうが可能性は高いのです。売り物を新しく開発するタイプのビジネス展開においては、理想的には顧客がすでに明確になっていることが望ましいといえます。

 次に、どのような自分自身の出口を探すかについて、言及してみましょう。本書の主たる読者の想定層はホワイトカラーたるサラリーマンです。会社づとめを複数年したあとでの再雇用でない出口、すなわち自立・独立を対象にしているので、会社のなかで何かを掴んだ、またはその経験をベースにして新しい道を探す方々を対象にしています。その観点では、まずは自分の強みを発揮できる新しい事業を起こすのが最良です。この内容はひとつの会社だけではニッチとなるような専門性を持つが、顧客は複数にまたがる業態が狙い目かもしれません。この経験は大なり小なりのイノベーション経験ともいえ、実は大変貴重で価値が大きいものです。

 例えば、注目すべき(学ぶべき)ケーススタデイとしては自営のコンサルテング会社、専門の技術や資材をもとに複数の会社をつなぐ、コーデネート的な商社、特殊な部品や製品を開発する試作会社、さまざまな情報を集めて、目的に合わせて加工する調査、リサーチ会社などです。これらには会社や組織内で培った専門性を異なった企業や組織で展開するという、顧客価値とは何かという共通性の可能性があります。直接アプローチすることで個人としてはこれまで組織としての収益として、納めてきた上納金を納める必要がなくなり、もっと稼げることになります。


・いわゆる斡旋、紹介業者(AGENT)をどのように考えるか

 これはわかりやすくいうと、芸能人などがよくやる、事務所、エージェントに所属しておくという展開です。マーケテング活動の一つに他人の力を借りる営業代理、販売代理をつかうという方法論となります。ある意味での営業の外注化です。サラリーマンとしては何となく当然かと思う面もあり筆者もこれにちかいことをいくつかやってみました。

 ここで一つ知っておくべきことは、ではどのくらいの営業費用をとられるかです。現実的に営業関係者(いわゆるエージェント)がとる分け前は通常30%-60%です。これを高いと思うか、安いと思うかはひとそれぞれですが、「口利き料的な手数料」と考えると、かなり高いな、と感じますが、いわゆる客の開発から客との詳細打ち合わせと契約、さらに集金まで全部アレンジしてくれる「ややこしいことを全部やってくれる」と考えると妥当な金額とも思えます。

 実際に友人のコンサルタントの何人かも、このようなエージェントを活用していて、その方からも登録をすすめられ活用したこともあります。何回かそのような中間エージェントを活用してコンサルを行ったあとで、いろいろと気が付きました。コンサルタント業の中でもこれらのエージェントを使うことで、(飛躍的に)顧客を増やすことが出来る人は結構限られるということです。エージェントにとっていわゆるコンサルは商品ですから、そのコンサルが売れる前提がいくつかあるはずです。気が付いたことを整理します。

 ①コンサルとして商品内容(専門や分野など)が明確に表現できて実績も豊富な方

 ②このためにはそれぞれの分野ですでにコンサルとして著名であること

 ③すでに仕事はある程度、自分で確保できていて、追加で(余裕で)コンサル仕事をうけ

  る立ち場の人

 すなわち、コンサル初心者や、知名度のない人はそもそも、エージェントもコンサルを中途半端にしか、売りようがないのです。それでも注文が取れたときにはどうなるかというと、結論的には一度きりの講演などの売り切りならば良いのですが、顧客と一緒に動いて考えるというコンサル仕事となると2度手間になります。最初はエージェントを介してやりあっていた顧客ニーズとの内容打ち合わせなどが、間に入れることによって要領が得られないことが多々発生してしまい、直接細かく顧客とやり取りをやりなおしとなります。

 そのうちに間に入ってもらう価値はほとんどなくなって、事務作業だけとなります。もちろんこの場合でも手数料はちゃんと取られていきます。最初にお客をみつけてくれるという大きなステップへの価値はみとめるものの、それ以上のなにものでもありません。(その観点では例えば50%の手数料というのはいくら何でも高いですね!)

(2019.11.13 出川改正)

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