ドイツ博物館を詳細に調査する、という主目的のためにドイツ ミュンヘン中心街のすぐ横にあるIsartor 駅近くのホテルに連泊しました。ドイツに行くのは初めてでしたし、博物館などの調査のために連泊する事も初めてでした。行く前は 1 週間連泊して飽きないのか、などと心配しましたが実際に終わってみると全く飽きることはありませんでした。
ミュンヘンには 1 週間滞在しても回りきれないくらいの博物館、美術館があります。滞在中は毎朝 1 時間程度ホテルの近辺を散歩し、美しい街並みを堪能することができました。歴史を感じさせる立派な教会が多数あるのが印象的でした。しかし、ミュンヘンの街は第二次大戦時の空爆でほぼ完全に破壊されたといいますから、そこからの再興に成功したことになります。
現在の博物館や美術館の建物そして膨大な収蔵品はその戦災を免れたか、修復したということになります。ただ、残念に感じたのは歴史的建造物以外に関しては落書きの街とでも言いたくなるくらい落書きが目に付く事です。
ドイツ博物館はイーザル(Isar)川の中州にありますが、その川沿いには歩道が整備されていて、散歩するとその豊かな水量に驚かされます。街中の川にもかかわらずその水量を利用した発電設備がありました。もちろんこの豊かな水がミュンヘンビールを生み出しているということが容易に想像できます。
さて本題の博物館ですが、まず博物館とは何かを改めて確認しておきますと、例えばWikipedia によれば「ある分野にとって価値のあるものを集め、学芸員が研究をし、来訪者に見せるための場所」ということになります。
研究するためですから可能な限り本物でなければなりません。そしてその研究の成果を来訪者に見て理解してもらうことが重要になります。来訪者には、勉強のためであれ、趣味であれ展示物を見てどのようにして使われたのか、どのような機能をしていたのかが理解できなければなりません。場合によっては使われている状況をそっくりそのまま再現するような展示にすることも必要になります。その意味においてドイツ博物館の展示は凝りに凝ったものと言えるでしょう。飛行機や船、エンジン、蒸気機関といった大きな物もそのまま展示することで見る者を圧倒し感動させます。ある程度ものを知った技術者でも、本の挿絵や写真で見たものの現物が自分の眼の前にあることで新鮮な感動があります。これから科学的技術的を学ぶかもしれない子供達には先ずは大きさを感じてもらうことが興味を持たせる近道かもしれません。そういう意味で重厚長大産業の科学技術はある意味で展示が楽です。
逆にナノテクノロジーや半導体というものは小さい事に意義があるのですがそれを専門外の人に感動してもらう、理解してもらうのは難しい事であることがよく分かります。自分の専門が半導体の微細加工なので、ドイツ博物館における展示の工夫も良くわかります。しかし、巨大なものの持つインパクトに比べると見劣りはします。
ドイツ博物館には、見るだけでなく物理法則を体感するための展示もあります。もちろん日本の上野の国立博物館にもありますがこれから科学技術を学ぶ人が実演を通して学ぶ、面白いと感じるための必須の展示です。実演というところでは高電圧を使った放電はなかなか他では見られないものがあります。3フロアぐらいの吹き抜けになった大きな空間でいくつかの種類の放電現象を見せます。これも思い返せば大きさの持つインパクトですね。
博物館は現在の最先端の科学技術を見せるよりも科学技術の発展の歴史を見せることに重点が置かれています。今から 100 年以上も前にこんな巨大な歯車があったのか、とか計算機はこのように発達して来たということがわかります。
航空機や船は専門外ですが、いくつかの航空機、船の変遷を見て行く事で自分の中で当たり前の違いを改めて感じさせるものもあります。航空機のプロペラは前(機首)にあるのにどうして船のスクリューは後(船尾)にあるの、というのがその事例です。専門分野では専門分野なりに、専門外でも専門外なりに楽しみ方があります。
一つの分野だけではなく、その周辺の技術や一見関連の無さそうな分野も一緒に見て回ることで、実は関連性が分かるので幅広い分野の展示を一堂に集めるということにも博物館の意味があります。そして、展示の点数が多いことも大切なことです。興味がなければ似たようなものがたくさんあるな、で終わってしまいますがその分野に多少なりとも知識があり興味を持っていると、ここがこう変わった、この部分に進歩があるという事を見る事でまた気付きがあります。
展示物を見て感動を持つことには極めて重要な意味があると考えています。「感動した」ということはそこに確かに何か新しい気付きが自分の中にあったから、と理解しています。その気付きは言葉で表現しにくくても、自分の持つ意識の下にある暗黙知はどんどん更新されたという事に他なりません。
ついでに言うと定義上、美術館も博物館の一種です。例えばピナコテーク美術館の展示室の壁にはルーベンスの超巨大な宗教画が何枚もあります(もちろん本物)。それを見ると、なぜこんなにも大きな絵を描く必要があったのか、と疑問に感じます。しかし、実際にフラウエン教会やルートヴィヒ教会などを訪れてみるとその疑問は氷解します。とにかく教会の壁が大きいので、そこを参拝する者を感動させるにはそれくらいの大きな絵が必要になるわけです。そういう意味で博物館、美術館、教会をセットで回ることで展示物の理解をより深めることができます。
旅程
往路 2020/2/22(土) 直行便時間 : 12 時間 10 分
東京 HND 12:35ーミュンヘン MUC 16:45全日空 2172/23
土曜日の昼に出発して、その日の夕方に到着
復路 2020/2/29(土) 直行便時間 : 11 時間 40 分
ミュンヘン MUC 20:00ー東京 HND 15:40 +1 日全日空 218
土曜日の夜に出発して、日曜日の夕方に到着
宿泊
Hotel Isartor 2 月 22 日-2 月 29 日 7泊
訪問先など
2/23(日) ドイツ博物館 1 回目
2/24(月) 交通博物館、SIMENS 本社ビル、レジデンツ
2/25(火) ダッハウ強制収容所記念館、オリンピック記念公園
2/26(水) BMW 博物館/工場、狩猟博物館
2/27(木) 航空博物館、ピナコテーク美術館
2/28(金) ドイツ博物館 2 日目
2/29(土) ドイツ博物館 3 日目、英国庭園、白バラ記念館