早稲田大学 名誉教授 浅川基男 asakawa@waseda.jp
本日はご多忙の中、「早稲田大学機械工学科・機友会創設100周年記念式典にご来場いただき誠にありがとうございます。また、ご来賓の方々には大変示唆に富むご講演・ご祝辞を賜り厚 く感謝申し上げます.最後に機械教員および機友会を代表致し まして閉会のご挨拶をさせていただきます。さて、今後100 年、機械工学はどのように変遷して行くのでしょうか? 10年先の予見すら難しい時代ですが、そのヒントになるのが先達の生き様やその歴史を紐解くことと考えます。ここで「早大理工」の「理」と「工」について、あらためてご紹介したいと思います。まず、漢字「工」は諸説がありますが、上の横線は「天からの恵みであるエネルギーや資源」を表し、下に伸びる横線は「地上にある社会・人類」を表し、上から下の縦線はその天から地へ恵みを与えるための「ワザ・技術」を意味するとも言われております。次に「理」の語源は掘り出したままの原石である「あらたま」を磨いて美しい模様を出すことであります。したがって、早稲田における「理工」とは、「工を理する」すなわち「工学を科学的に昇華・普遍化させること」であり、「理学と工学を併設した意味ではない」と理工100年史に記述されております。理工科と称しながら、まず工学系の機械科と電気科が最初に創設された意味もこれで納得できます。経済も一時は「財」を「理」する「理財」と呼ばれていたと聞き及んでいます。初代理工科長の阪田貞一先生は1908年の早稲田学報で「理工科では数学・物理・力学・英語が必須。大学予科の間に十分鍛え上げる必要がある」さらに「理工在学中に原理を十分に研究すれば、社会に出てから著しく進歩する」と100年前から今を予見しておりました。すなわち、基幹・基盤であり今後とも深める部分、その周りにその時代時代に於いて変遷して行く学問・産業があります。先ほど「工」の語源を説明しましたが、これは機械工学の定義と同じです。すなわちMechanics とは「エネルギーや資源を活用して有用な「仕組み」、「物」を作り出すこと」にあります。機械工学は特定の産業分野に偏りが無く、建設・土木から電気・ 情報・サービスに至るあらゆる産業に展開できる点に大きな特徴があります。すなわち口幅ったい言い方になりますが、機械 工学は理工系全体を俯瞰する「理工学部理工学科」と称してもよい立ち位置にあります。以上をまとめますと、①教育面では「数学・物理・機械系専門学力などにおける深い造詣の涵養」であります。産業界で貢献する機械系エンジニア、大学を含めた研究機関等で顕著な成果をあげている研究者に共通する要素は、「基礎に裏打ちされた構想力、ならびにこれを具体化する設計能力・実行力」にあります。②この主旨に沿えば、研究も「基盤的研究を深化させ、これに支えられた先進的研究の追求」が必須となります。この考えに「ぶれ」がなければ100年後も機械工学はますます発展して行くものと確信しております。今後とも私どもは過去の先人に負けないよう高い志を持って機械教員、在校生、機友会が手を携えて邁進する決意であります。簡単ですがこれをもって閉会のご挨拶に代えさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。