早稲田大学 名誉教授 浅川基男 asakawa@waseda.jp
「浅川研究室運営に学生から不満が寄せられましたのでご連絡しておきます。最近、このような不満や訴えが学生から多く当課としても大忙しです。」と理工事務所から連絡があった。浅川研究室では、総務・会計・工場見学・懇親会・図書・部屋の整理整頓など主として院1年生が役割分担して、研究室運営を15 年以上継続してきた。ある時、事務所に「浅川研では学生に研究室の仕事を押し付ける。その仕事は社会に出てからのトレーニングにも役立つとも言う。室の雑用は学生に強要しな いでほしい」との訴えがあった。そこで、私を抜きに浅川研院1年生・院2年生の学生のみ11名で話し合って、今後の研究室の運営方針について考えてもらうことにした。その結果、現状の室運営で問題ないとの意見が多かった。ただし、一部の意見として仕事の結果だけでなく、そのプロセスや結果のフィードバックについても配慮すべきとのコメントが あったと報告を受けた。
私には研究室における役割分担仕事は、社会に出てから最も役にたったとの経験がある。例えば、大学院1年の時に恩師の10周年記念パーティーの幹事を引く受けた。会場の設定、先輩との幹事会準備と議事進行、OB への案内状の配布、記念文集の編集、当日の式次第、運営などの作業の忙殺された。しかし、この経験が会社に入ってからの「仕事プロジェクト」に大いに役に立った。エンジニアらしい設計・研究・開発業務などは、その後しばらく経ってから与えられる。今では、恩師から記念行事の幹事役を与えられたことに感謝している。ただし、一部の学生に不満があったことも事実であり、学生に趣旨を納得してもらいながら室運営をして行くことにしたい。「最近このような不満や訴えが学生から多く当課としても大忙しです。」と事務職員が語るように、なんでも外部へ訴える風潮に複雑な思いは残る。