早稲田大学 名誉教授 浅川基男 asakawa@waseda.jp
高度成長を遂げた日本の製造業が大きく構造的変化を体験したのはオイルショックであった.オイルショックの後の1975 年代,製造業はこの環境の変化に果敢に挑戦し,省エネルギー技術,脱エネルギーで,危機を乗り切った.
オイルショックのつぎに経済バブルが破裂した.しかし,その対応は非常に消極的,他力本願的,対処療法的であった.この点がオイルショックを乗り切った製造業との大きな違いである.
日本システムの模範といわれた官僚システムが,時代の流れに取り残され,空母の時代に大砲巨艦主義を払拭できないという昔の失敗を繰り返して,自ら瓦解しその評価は地に落ちた.国民の大多数は派閥と地元利益誘導型でその場対応型政治に飽き飽きしていたのである.その一つの方向として日本人が最も不得意な「理念」とか「あるべし論」を高く掲げた政治であって欲しい.
さて,未だ何も手に着いていないシステムがある.それが教育界である.このままで良いと思っている人は誰もいない.全国民から負の意味で脚光を浴び,指弾され,変革を迫られるのが初等・中等教育,そしてその集大成である大学教育である.
私は常日頃,教育改革はマクロの議論や総論では全く動かないと考えている.なぜなら典型的な総論賛成,各論反対の世界だからである.各論から攻めなければ何も変わらない.各教員・職員・学生が感じていることを日常の中で具体的に変えていくことが一番の近道である.
すなわち,ビデオ撮影等による教員相互の授業評価,学生の授業評価の実施と公表,楽勝科目の廃止,進級の厳格化,OBの大学への提言とその公表等々,身近にいくらでも変革する問題点がある.「教育が如何に疎かになっているか」を具体的に摘出・情報公開・改革していくことが教育改革・大学改革の導火線であると考えている.