早稲田大学 名誉教授 浅川基男 asakawa@waseda.jp
早稲田に赴任して早くも2 年後に,機械工学科主任の役割が回ってきた.主任としての役割は多岐にわたる.その一つに学部長と各学科主任が一堂に会する主任会議がある.あるとき学部長の教員枠配分案に対して腑に落ちない点があったので,機械工学科主任として,以下のような対案をまとめ,要望書を学部長宛に提出した.
専任教員を増減する場合,最もわかりやすく,多く引用される評価値の一つがStudent Ratio である.例えば,国公立大学の機械系の場合,1専任教員,1学年あたり受け持つ学生数は,1~4名で平均的には2名程である.機械系私立大学は,5~14名で平均は9名である(1996 年,日本塑性加工学会教育問題委員会調べ).当大学機械工学科では,11.2 名(教員数は26 名,学科学生数は290 名を前提)であり,私立大学の中でも多い部類に属する.参考として慶応大学の機械系は,5.6 名(専任教員39名,学科定員220 名)でかなり少ない部類に入る.
以上の前提で当大学各学科の比率を計算すると14 学科中,機械工学科は11.2 で最もその比率が高く,ついで建築10.6,通信10.0,電気9.4 である.最も比率の少ない物理学科では機械の1/3 に相当する3.6 である.全学科平均では7.2 である.つまり学生が2割弱(290/1640)を占める機械工学科に,なぜ1割強(26/227)の教員しかいないのか?
本年度修士課程受け入れの統計(1998 年9 月連絡委員会資料)によれば,一般入試受け入れ枠(原則収容定員+30%)に対して志願者数が上回ったのは機械と建築だけで,両学科とも1.64 倍に達したが全学科の平均倍率は0.56(志願者382 名/受け入れ枠678 名)である.他学科は全て受け入れ枠を大きく下回る合格者数であり全学科の平均は28%(合格者191 名/受け入れ枠678名),最も少ない学科では8%である.すなわちある学科では100%を収容し,他の学科では8%程度というアンバランスが現実に生じている.
他学科と同じ授業料を払いながら,機械工学科の場合30 余名の学生(3年,4年,大学院生)が一つの研究室で研究活動をせざるを得ない状態は異常である.また大学院を強化充実しようとしている際に,早稲田を志願する優秀な学生にその門戸を閉ざさなければならない状況は学生および早稲田大学にとって大きな損失である.誰にでも 納得がゆき,わかりやすく,公平な教員配置案を切望したい.
後日談:本件は各学科の主張がぶつかり暗礁に乗り上げ,その後全く進捗が無かった.その解決は2007 年の学部改革まで待たなければならなかった.