早稲田大学 名誉教授 浅川基男 asakawa@waseda.jp
私は4月より,ニューヨークとフィラデルフィアに近いアレンタウンのリーハイ大学に在外研究中である。何はともあれ早速、大学・大学院の講義を聞き回った。米国の教授はどのような講義をし、学生はどうこれを受け止めているのか? 日本で聞いていたことと実際はどう違うのか? 私は興味津々で教室の一隅に着席して聴講した。
まず、理工系の材料と機械系の受講内容を紹介しよう。1年の 基礎教育(例えば物理)では百人近い大教室の講義があるが、専門教育の2年以上では30人以下,大学院では10人以下の講義である。50分講義、週2~3回で半期終了が一般的である。さて、共通していえることは、教授は講義開始時間前に教室に入る。その授業が真にわかりやすい、明瞭な言葉、明快な論旨、事前に準備・推敲された内容、学生とのアイコンタクト等々である。板書主体だが、プロジェクターによる映像や試料持参により、いかに学生に理解させ関心を持たせるかに工夫を凝らしている。例えば「材料力学」の講義では、いろいろな材料をいかにも力のありそうな学生に破壊させ、その場で破壊の形状、メカニズムを体得・観察させていた。
一方、学生はどうか。講義に遅れて来る、飲み物はもちろん食べ 物まで持ち込む、帽子はかぶったまま、耳や鼻のピアス、足を前に投げ出したままの学生等々。しかし、講義が始まった途端に私語はなくなり、教授の話に集中し、少しでも解らない用語・内容が飛び出すと次々と質問 を発する。ときには、教授の話しを遮るようにして自分の意見を 述べる。教授はどのような質疑に対しても、丁寧に誠実に答える。平均して、講義の3分の1は学生との質疑応答に費やされる。大学院では半分以上になる。双方にとって実利的・効果的な授業となっている。このような積み重ねが「教授の熱心でフレンドリーな講義」と、「講義に対する学生の真剣で積極的な姿勢」を生み出していると感じた次第である.