早稲田大学 名誉教授 浅川基男 asakawa@waseda.jp
この3ヶ月、短期間ではあるが米国の学生と一緒に講義・研究 論議・講演会・懇談・会食・パーティ・小旅行を通して感じたことの一部を述べてみたい。日米学生の共通な点は、若者特有の「爽やかさ」にある。私は企業から大学に来たため、特にこの「爽やかさ」には敏感であ る。勉強に励み、スポーツや遊びを楽しみ、感受性や好奇心が旺 盛で打算や計算抜きに交流する。「ああ、やはり同じ若者だな」と何度となく感じ、安堵した。
さて、米国学生の特長は何であろうか? 第1に挙げられるのはフランクでフレンドリーな点といえよう。廊下で会うたびに「ニコッ」と会釈するか、「ハアーイ」と声をかけてくる。私の部屋に知らない学生が挨拶に立ち寄る。別れるときには「ハブ・ア・グッド・デイ」と言い残して去る。これだけのことだが一日中気分が良い。浅川研究室でも「しっかり挨拶しよう」が標語に なるくらいだから、日本はまともに挨拶が出来ない国になってしまった。この挨拶があるからこそ、次の段階であるフランク・フレンドリーになれることを実感した。第2は人前でのプレゼンテーションや質疑応答能力である。日 本では街頭インタビューで、腰が引けた受け答えをする若者が多く見られる。面談が如何に不得意かの典型例である。一方、米国学生はプレゼンテーションが格段にうまい。もの怖じせず堂々と発表する。相手の知りたいことを要約して説明する力、反論を構築する力、自分を第三者に正当に評価してもらおうとする意志が大である。それでは米国学生の問題点は何であろうか? 私は多くの意志が個人の自由に任され、組織体としてモラルや纏まりに欠ける点ではないかと思っている。コーラを飲みながらの聴講、講義途中での入退席、時と場所に関係ないカジュアルな服装、三々五々に集まり適当に帰る集会等々。
しかし、組織と礼節を大切にして来た国日本も、今では同じ状況になりつつある。これが問題点との認識すら無くなって来たことが問題である.