早稲田大学 名誉教授 浅川基男
asakawa@waseda.jp
早稲田大学のチュートリアル・イングリッシュが今大変な人気である。オープン教育
セ ンターが統括し株式会社組織「早稲田大学インターナショナル」が実質的に運営して
いる。4人1組の少人数対面レッスンに加えインターネット・レッスンによる自習と英文
添削が加わる。受講した学生のアンケートでは九割以上が積極的に評価しており、
TOEIC 点も確実に上昇している。自ら高額の受講料を払い、旧早実教室の細かく仕切ら
れた部屋に朝から多数の学生が詰めかける光景は尋常ではない。開設初年度2千名の定員
に対して3千名の応募があり、本年度は定員5千名に拡大している。さらにこれを正規の
英語単位として認可する学部が現れ、受講生が1万人に達するのもそう遠くではなさそう
である。講師はネイティブおよび同等の実力を有する日本人で、もちろん講師の高学歴は
必要とされるが会社の最大の関心事は「いかに学生の 興味を引きだし、実力を上げる
教育ができるか」にある。「教養の英語」を隠れ蓑に「使える英語」を教えられなかった
むしろ軽蔑してきた高等教育機関の罪は大きい。英語教育はコンピュータを使いこなす
教育とどこが違うのか? 初修外国語も然りである。さらに進めて理工学部を例に挙げれば
数学、物理・化学も「将来の専門科目を駆使するための大切な道具」である。
使えて役に立つ数学、物理・化学でなければならない。
しからば専門科目はどうか? 専任教員は教育だけでなく研究活動が重要な使命であり、
研究は教育を質的に変化させることも事実である。しかし、それは大学院教育に当て
はまり、学部は専門基礎をしっかり叩き込む「専門基礎教育」が大切である。
今の英語教育の変化が、ただ単に英語のみに留まらず大学教育それ自体を大きく変革
する端緒になることを期待している。
さて、少なくとも使える英語の日本の実力を北朝鮮などの最下位クラスから早期に
脱出したいものである。