基礎をしっかり学び核心をつかめ:若いときに「邪道なことはするな.本道の
技術でやれ」と毎日厳しく叱責されことは今では大変感謝している.
基礎本や文献を参照しない若いエンジニアには,基礎や常識を技術に生かし
切れていない事例が多い.同時に技術の核心をつかむ訓練を積むことが大切で
ある.例えば材料力学は簡単明快な見通しを与えてくれる.大学機械系学科で
材料力学が必須科目になっている所以もここにある.技術満足度の高い革新
技術に足下をすくわれるな:若いエンジニアが「革新技術」にあこがれる気持ち
はわかるが,慎重さも必要である.革新技術にのめり込んだばかりに,一生を
棒に振った仲間を多く見てきた.ロータリエンジンと既存のレシプロエンジン,
ストリップキャスターと既存の連続鋳造,最近ではリニア新幹線と既存の新幹線,
電気自動車と既存エンジンの自動車など枚挙にいとまがない.革新技術は既存
技術の進歩に追い抜かれることがしばしばあるからだ.革新技術に飛び込む前に
既存技術の可能性を冷静に吟味してからでも決して遅くはない.
仕事とは決める,実行する,価値を生み出すこと:仕事場では実験し,資料を
書き,手配する,すなわち作業するところであり,「考える」場では無い.
考えるだけで作業に結びつかないのは,弾性域を行ったり来たりするようなもの
であり,世間ではこれを「遊び」と評価する.
自分の手に余る問題は他人を巻き込め:仕事は入学試験や定期試験ではない.
すなわち時間はたくさんある,他人と相談しても良い,解は一つではない.
大学・学会・社内の人脈を常日頃大切にし,ヒントを与えてくれる社会環境作りも
本人の実力の一つである.現場に宝物がある:現場には泥をかぶり,少し泥の
剥げたところが輝いている,ダイヤか石ころか見分けが付かない宝物が埋まっている.
それを嗅ぎつけ,発掘し技術課題にまで設定するのが技術者の醍醐味である.
事務所やパソコンの中に宝物はない.現場へ頻繁に出ているか? 現場で鍛えられて
いるか?部下は叱って育てよ:褒められながら育った部下は修羅場にはめっきり弱い.
最近の管理者はあまり叱ることをしない.これではますます柔なエンジニアとなって
しまう.叱れないリーダーは自分に叱る自信がないからでもある.しかしリーダーは
自分の自信に関係なく,その役職としての立場が叱るのだと理解して欲しい.叱って
叩いて育てよ.ただしそのフォローやアフターケアも抜かりなく.会社はいつでも
辞められる,はやまるな:会社は 5 年もすると自分の意思で仕事がまわり,周囲から
も頼られるようになるものだ.しかしそれまでの3日,3月,3年・・・やめたくな
る時期が必ず誰にでもある.「会社はいつでも辞められる・はやまるな!」と
喚起せよ.部下は引き留められることも期待している.畏友古堅氏のコメントにも
お礼したい.